相続に関する説明ごと

1.『相続』とは、

人が死亡した場合に、その死者と一定の親族関係にある者が財産上の法律関係を当然に、かつ包括的に承継することを言います。(狭い意味での相続)

この場合の死者を「被相続人」と言い、承継する親族を「相続人」と言います。

これに遺言による財産の処分(遺贈)を含めて、人が死亡した場合に、その者に財産上の法律関係が他の人に移転することを広い意味の相続と言います。

 

2.相続開始の原因及び時期

相続は、死亡によって開始します。(民法882条)

この規定には、2つの意味が存在します。

死亡」以外による相続開始の原因は無いということ。

「死亡」には、

  1. 失踪宣告によって死亡したものとみなされる場合(民法31条)
  2. 認定死亡によって死亡したものと事実上推定される場合(戸籍法89条)

「失踪宣告」には、普通失踪と特別失踪があります。

「認定死亡」・・・死亡確実であるのに関わらず死体の確認ができない状態

相続開始の時期は、人が死亡した瞬間であるという意味です。瞬間に相続なので、遺産は、一瞬たりとも無主の状態にならないということです。(民法の建前)たとえ、相続人が、被相続人の死亡を知らなかったとしても同じです。

そして、被相続人が死亡と同時に相続が開始するということなので、その時に生存している者だけが相続人になれるということも意味しています。(同時生存の原則)

ここでは、触れませんが、例外として、「同時死亡の推定」という制度があります。この場合には、互いに相手を相続もできず、遺贈の効力も生じません。しかし、代襲相続は起こり得ます。

 

3.相続開始の場所

民法883条では、「相続は、被相続人の住所において開始する。」とあります。しかし、この規定は、相続に関する訴訟の管轄を定める基準として設けられたものですが、これについては、もっぱら民事訴訟法の規定(民訴5条14項)が適用され、本条が適用される余地は殆どありません。

 

【相続の承認と放棄】

(1)単純承認(民法920条、921条)

被相続人が被相続人を無限に承継することです。そして、次の事由があると、単純承認をしたものと扱われます。

  1. 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき
  2. 熟慮期間内(相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内)に限定承認または相続の放棄をしなかったとき
  3. 相続人が限定承認または相続の放棄をした後でも、債権者の信頼に背く行為があったとき。ただし、相続人が相続放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、単純承認とはみなされません。

(2)限定承認(民法922条~937条)

相続人は、被相続人の債務および遺贈の弁済を相続財産の限度でのみなすという留保つきで相続の承認をすることです。

  1. 限定承認は(相続を放棄した者を除き)共同相続人全員でしなければなりません。
  2. 熟慮期間内に家庭裁判所に対して限定承認をする旨を申述しなければなりません。

(3)相続の放棄(民法938条~940条)

相続の開始によって生じた不確定な相続の効力を拒絶する単独の意思表示を言います。

  1. 熟慮期間内に家庭裁判所に対して相続を放棄する旨を申述しなければなりません。
  2. 相続放棄がなされると、その者はその相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなされます

 

●相続の承認(単純承認・限定承認)・放棄をなすには行為能力が必要です。

●相続の承認・放棄がなされれば、熟慮期間であっても、これを撤回することができません。ただし、制限行為能力、錯誤、詐欺、強迫等による取消し又は、無効を主張することは認められます。

 

【遺産の分割】

遺産分割とは、共同相続財産を相続分に応じて分割し、各相続人の単独所有とすることを言います。

(1)遺産分割の実行(民法907条)

①協議分割・・・共同相続人は、被相続人の遺言で禁じた場合を除いて、いつでもその協議で、遺産の分割をすることができます。(民法907条1項)

裁判分割・・・遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議することができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができます。(民法907条2項)尚、家庭裁判所は、審判分割に先立って、調停による分割を試みます。(調停分割:家事審判法17条以下)

遺産分割と相続分の関係

遺産は、共同相続人間に協議が整えば、どのようにでも分割をすることができます。例えば、3人の子が遺産を3対0対0で分ける遺産分割協議や、「甲地は子Aに相続させる」と遺言がある場合に、甲地を子Aではなく、子Bが相続する遺産分割協議も、相続人全員の自由意思によるものであれば有効になります。

つまり、遺産分割における相続人の意思は、法定相続にも遺言にも優先することになります。

なぜなら、相続放棄が許されている以上、遺産分割においても、持分の全部又は一部を自由に放棄することができるからなんですね。

したがって、相続分は、「遺言」や「法定相続」にせよ、相続人は各自そこまでなら「権利」を主張できるという「相続人の権利の限界」を定めたものであり、必ずそのようにしなければならないというものではないからです。

ところで、遺産「債務」の自由な分割は、遺産債権者に主張はできません。これは遺産債務の逸脱を許さないためによります。

遺産分割前に共同相続人の1人がその相続分を第三者に譲渡した場合、1カ月以内であれば、他の共同相続人その相続分の価額及び譲受けに要した費用を償還して、その相続分を取り戻すことができます。(民法905条)

 

(2)遺言による分割方法の指定・分割の禁止(民法908条)

①遺言による分割方法の指定・・・被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができます。(民法908条前段)

尚、遺言書において、特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』趣旨の遺言者の意思が表明されている場合、特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではなく遺産の分割の方法を定めた遺言と解すべきであるとするのが判例の立場です。

②遺言による分割禁止・・・被相続人は、遺言で相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することができます。(民法908条後段)

尚、分割の禁止は、遺産の一部又は全部についても、相続人の一部又は全員にたいしてもすることができます。

(3)遺産分割の効果(民法909条)

遺産の分割は、相続の開始の時に遡ってその効力を生じます。(民法909条本文)ただし、第三者の権利を害することはできません。(民法909条但書)

 

【相続回復請求権】

  1. 意義・・・相続人は、相続開始と同時に、被相続人の財産に属した権利義務を当然に包括承継しますが、先順位の相続人が実は相続欠格であり、そのことが相続時には判明しないこともあり得ます。このような場合に真正相続人が表見相続人に対し正当な相続権を主張して、相続目的物の占有・支配を回復するために認められるのが相続回復請求権です。
  2. 請求権者・・・相続回復請求権を行使できるのは、遺産の占有を失っている真正相続人に限られ、相続財産の特定承継人等の第三者は行使できません。
  3. 消滅時効(民法884条)・・・相続回復の請求権、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年で、時効により消滅します。または、相続開始の時から20年消滅します