1.遺言の方式

◎遺言を残したいと考えるとき、やはり最初に思うことは、遺言書の作成にあたり、「どのように作成すればよいのか?」ということだと思います。

この方式に関しては、民法に定められており、その方式を満たさない場合には、遺言としての効力が認められないことになります。すなわち、無効です。

【遺言制度】遺言を残そうと思う者が、死亡後の自己の財産に関し、最終意思を表示した場合には、その意思を尊重するというものです。

民法は、遺言者の真意を明確にし、遺言をめぐる紛争を防止するために、遺言の方式及び遺言することができる事項を定めています。このあたりをしっかりとしないと、相続人の間で遺言の内容に疑義が生じ紛争になる可能性があります。

【遺言自由の原則】遺言は、15歳以上であれば、誰でもいつでも自由にすることができます。(民法961条)また、方式に従い、いつでも遺言の内容の全部または一部を自由に撤回することができます。(民法1022条)

通常は、自分の意志で遺言を残すものですが、騙されたり、脅かされたりなどして、遺言をしてしまった場合、および遺言の撤回又は取消し、変更などを前述の理由でしてしまった場合のその原因たる不法行為者は、相続人にはなれません。

ところで、遺言は、方式に従えば自由にすることができると書きましたが、ひとつだけ例外があります。正当の権利を持つ相続人には、最低限の財産を相続する権利が存在します。これを「遺留分」と言いますが、例えば、子がいるのに、全財産を実の弟に譲るという遺言は、無効になると言うことです。

【遺言の方式】遺言の方式には大きく分けて、普通方式特別方式があります。

[普通方式]

1.自筆証書遺言(民法968条)遺言者がその全文日付及び氏名自書し、押印することによって作成することができます。

解説

自書を要求していますので、ワープロ、タイプ等の使用は認めていません。

氏名は、氏または名のどちらでも良いとされています。ペンネームでも有効。

押印は、三文判でも、問題はありません。指印でも良いとされています。

日付は、遺言書作成日時の遺言能力の有無、矛盾抵触する遺言書が複数存在する場合の先後関係を決するために必要とされているため、客観的に確定できる程度に特定されないといけません。「平成30年9月吉日」はダメ。(民法968条2項)

以上ですが、遺言の効力に問題を残さないためには、戸籍上の氏名を用いて、実印を使用するのが望ましいと考えられています。

※遺言書に加除、変更を加えるためには、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記し、その部分にも署名し変更があった場所にも押印する必要があります。(民法1004条1項)

※遺言を執行するためには家庭裁判所の検認が必要とされます。勝手に開封してはいけません。

長所:簡単で費用が掛からない。また、遺言の存在や内容を秘密にすることができる。

短所遺言書を紛失する恐れがある。また、偽造、変造されたりする危険や方式の不備、文言の解釈に問題が生じる可能性がある。

2.公正証書遺言(民法969条)原則、公証役場で作成される遺言です。

解説 次の方式によります。

  1. 証人2人以上の立会いがあること
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  3. 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
  4. 遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し押印すること(ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。)
  5. 公証人がその証書が1から4の方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名押印すること

※遺言者が、口をきくことができない者である場合は、口授に代えて手話通訳等による申述又は、自書により遺言書の趣旨を公証人に伝えることによって公正証書遺言を作成することができます。(民法969条の2)

※耳が聞こえない者である場合は、読み聞かせに代えて通訳人の通訳又は閲覧により筆記した内容の正確性を確認することで、公正証書遺言を作成することができます。(民法969条の2第2項)

長所公証人のもとで原本が保管されるので内容の変造・紛失の危険がない。公証人が関与しているので遺言の効力が問題になる危険性が少ない。検認の手続きが不要。

短所:公証役場に行かなければいけない。費用がかかる。証人が必要。

※遺言者が病気等により公証役場に行けない場合は、公証人に出張依頼をすることができます。

3.秘密証書遺言(民法970条)次の方式に従って作成される遺言です。

  1. 遺言者が遺言書に署名し押印すること
  2. 遺言者がその証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること
  3. 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
  4. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印する

※遺言者が口をきくことができない者である場合は、遺言者は公証人らの前で、自己の遺言書である旨とその筆者の氏名・住所を通訳人の通訳により申述する。又は封紙に自署して申述に代えることができます。(民法972条)

長所:遺言書の存在については明らかにしながら、遺言の内容を他者に秘密にして保管ができること。自署能力がなくても作成できること。

短所:遺言書の内容については公証人が関与していないため疑義が生じる可能性がある。

※秘密証書遺言の場合は、遺言者自身の署名押印が必要とされますが、自筆証書遺言とは異なり本文については、代筆、ワープロによることもできます。

※遺言を執行するためには、家庭裁判所の検認が必要とされています。

※秘密証書遺言としての要件を欠いていても、自筆証書遺言としての要件を具備していれば、自筆証書遺言として有効になります。(民法971条)

[特別方式]

1.危急時遺言(民法976、979条)

2.隔絶地遺言(民法977、978条)