不倫の意義
この問題は男女間における法的紛争であり、このトラブル・法律問題には多種多様の類型があります。ここでは、主要な部分の解説に留めることにしました。
不倫の意義
「不倫」というのは法律用語ではなく民法770条1項1号に離婚自由として規定されている「不貞(な行為)」のことです。
裁判所は、「配偶者ある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうのであって、この場合、相手方の自由な意思に基づくものであるか否かは問わないと解する」としており、つまり、配偶者以外の者と性的な関係を結ぶことだという見解で、これを世間一般に「不倫」としています。
さて、不貞行為をされた配偶者ですが、不貞相手に対してどのような請求ができるのか考えていきましょう。
※配偶者とは、夫婦間で、夫なら妻のことを妻なら夫のことを配偶者と呼びます。
まず、不貞相手に慰謝料請求ができるのであれば何に基づくものなのでしょうか。
民法709条には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とあります。(不法行為による損害賠償)
すなわち、不貞行為が不法行為として認められれば正当な権利として慰謝料請求ができます。
※相手配偶者が浮気相手をだましていた(自分は独身者、ただいま離婚調停中等々)などの場合、 その相手にどこまで責任があるのかは問題がある
ここでいくつかの問題を挙げてみます。
- 請求相手が不法行為者なら不貞行為をした配偶者も不法行為者である
※民法719条には、共同不法行為者の責任として、各自が連帯して損害を賠償する責任を負うあります。
- 慰謝料請求をする時点においてその権利が消滅時効にかかっている
※民法724条1項には、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しなければ不法行為による損害賠償請求権は時効により消滅するとあります。
- 婚姻関係がすでに破綻した後に不貞行為のことを知った
※そもそもこの状況においては慰謝料請求はできない場合もあります。
〈当事者の基本関係図〉
図の説明
- X1とA は婚姻関係にある夫婦
- Aは不貞行為を行った加害配偶者(X1は被害配偶者)
- X2はX1とAとの間の子
- Y1はAと不貞関係にある者(すなわち不倫相手)
- Y2はY1の配偶者
あくまでも基本関係図であるので、当然登場人物には様々なパターンがあると思われます。
当事者の基本関係図のⅠ~Ⅶについて
(Ⅰについて)
AとY1との不貞関係があった場合における法的な問題として、まずX1のY1に対する慰謝料請求が考えられる。そして、この問題が主要なテーマあります。
(Ⅱについて)
X2(X1とAの子)がY1を訴える場面です。X2にしてみればY1のためにAが自分のことを顧みなくなったのであるから、Aからの愛情を受けることができなくなった等の精神的苦痛を受けたとの理由でY1を訴えたいと考えるのは当然あたりまえなことです。しかし、最高裁判例は子から不倫相手に対する慰謝料請求を原則否定しています。
(Ⅲについて)
これは夫婦間の問題でありAが不貞を働いた以上、それはX1にとって離婚事由になることは勿論、それに加えてX1はY1に対して慰謝料請求及び自分の配偶者Aにも慰謝料請求を行うことが可能です。しかし、実際の裁判例を見てみるとX1がAとX1の両者を訴えるケースもありますが、Y1のみを訴えてAは訴えず、それどころかAの不貞行為を許してしまっているケースが多いようです。
(Ⅳについて)
不倫関係にある又はあったAとY1相互間における争いです。
AがY1の歓心をを得るような言動をし、Y1がAを信じて情交関係に入る。
結果として、もし、AがX1の処に戻ることになったとすれば、Y1はAに騙され貞操を奪われたということで、貞操侵害等を理由にAに慰謝料請求を提起することになります。判例では、Y1とAのいずれかの不法性の度合いにより判断することになるようです。
(Ⅴについて)
(Ⅵについて)
(Ⅶについて)